宮島に生息する鹿の頭数や分布、植生の状況、鹿の食用となる植物の栽培が可能な土地やその面積を把握するなどの事前調査、鹿を避妊・去勢する方法の検討、適正な餌やりに必要な鹿の食べ物の調達、こうしたことを実施するための具体的な計画立案、人材の確保、継続的な状況監視、等々・・・ このようにカネも手間も時間もかかることを実行するほど、廿日市市には宮島の鹿を思いやる気持ちがないように感じられる。
自然公園法に定める環境大臣が指定する特別保護地区以外の特別地域(特別地域は特別保護地区と第1種〜3種特別地域に分類される)にいる鹿、国立公園の中にある宮島に生息する鹿に対する扱いについて、国の方針はどのようなものなのか、環境省に問い合わせてみたところ、細かな点は各都道府県にまかせている部分が大きいから、広島県に訊いてほしいと言われた。 広島県庁に尋ねると、よくわからない、宮島観光協会のほうが詳しいと思うのでそちらに相談してほしいと言われ、一般社団法人である宮島観光協会によれば、そのような問題は扱っていないとのことであった。
自然公園法は国が定めた法律であるのに、動物に関する個々の事例への対応は各都道府県にまかせているというのは、動物の種類や人と動物の関わりが地域によって異なるからなのだろう。鹿については、農作物を荒らす害獣として狩猟によって駆除される場合がある。さらにその肉は食用となっている。 それにしても、広島県において宮島の鹿の問題に関係のある部署にいる人が、この問題についての質問に明確に答えることができない・・・ 宮島の鹿は何によっても守られていないのではないかという気がする。
けれど、自然公園法は宮島の鹿を積極的に守っていないとしても、守ることを邪魔しているわけではない。 国立公園の保護及び利用について、特別保護地区を除く特別地域における動物の捕獲・殺傷、植物の採取・植栽は、環境大臣が指定する動植物に関して許可申請が必要とされている。 鹿や鹿の食用となる植物が「指定される動植物」でないなら、避妊・去勢を目的とした鹿の捕獲や芝草などの栽培は、許可申請は不要ということになる。 特別地域ではない普通地域においては、土地の形状変更について届け出が必要であるが、動物に関しては特に規定されていない。 だからできるところから着手しようと思えば、不可能ではない。
本来は野生動物である鹿を観光利用する目的で人間が餌付けし、鹿が人間に食べ物をもらうことに慣れた環境で繁殖してきたという経緯があるから、鹿の数が増え過ぎて迷惑だと言ってもその原因は人間であり、餌やり禁止のみという対処は個人的には筋が通っていないように思われる。(続く)
追記:このあとの記事に書いたように、調べる過程で宮島は県指定の鳥獣保護区であることが分かった。 |
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